2023年4月13日木曜日

RCJJ2023 競技結果および技術委員会の見解について

 ジャパンオープン2023名古屋大会にご参加いただいた選手、メンター、スタッフの皆さま、3日間ありがとうございました。


サッカー競技の結果および、競技結果に対する技術委員会の見解について掲載します。


〇競技結果

★サッカー競技カテゴリ別の上位チーム、受賞チームリスト

RoboCup Junior Japan Open 2023 Soccer Award


★最終結果

各カテゴリについて、以下を公開します。

・全試合結果

・試合結果に基づく順位一覧

・ソルコフ値とポスターを加味した世界大会推薦順位一覧

RoboCup Junior Japan2023 SoccerResults



〇競技結果についての技術委員会の見解について

本大会ではNSB 全6ラウンド、WSL 全9ラウンド、WSO 全7ラウンドを予定しておりましたが、WSLの2ラウンドがキャンセルとなり、全7ラウンドとなりました。

また、全カテゴリにおいてスイス式トーナメントの組み合わせに不自然な点が見られるとのご指摘をいただいています。


上記の2点について、今大会の競技結果および当日の状況を基に技術委員会にて検証した結果を記載します。

なお、大会参加者向けに先日配信しましたNews Letter 4と内容が被るところがあります。


前半でそれぞれの問題についての説明および経緯のご報告と、関連するご質問への回答を記載させていただき、後半で来年の大会に向けた考えを記載します。


★WSLの2ラウンドキャンセルについて

WSLの2ラウンドがキャンセルとなり、またそれに伴いWSOとNSBでも大きなスケジュール変更が生じました。

慌しい状況となったこと、また予定の試合数が実施できなかったことについて、お詫び申し上げます。

大変申し訳ございませんでした。


サッカー技術委員会では2016年からスイス式トーナメントを競技に取り入れています。

2015年まで採用されていた予選リーグ戦、決勝トーナメント戦という競技方式(FIFAワールドカップのような方式)に比べると以下のようなメリット、デメリットがあります。


<スイス式のメリット>

・組み合わせの運が結果に作用する重みが小さく、公平性が高い

・全チームにより多くの試合機会がある

・1ラウンドごとに順位が確定するため、任意のラウンド数で大会を実施することが可能であり、スケジュールの自由度が高い


<スイス式のデメリット>

・組み合わせが事前に明らかにならない

・組み合わせの決定方法が非常に複雑


ここで、スイス式トーナメントについて簡単に説明します。

スイス式トーナメントでは、ラウンドN-1までの成績を基にラウンドNの組み合わせを決定します。つまり、ラウンド1の試合結果からラウンド2の組み合わせを決め、ラウンド1と2の試合結果からラウンド3の組み合わせを決定していきます。


試合の組み合わせは以下のルールに基づいて行われます。

・同じ対戦は一度のみ実施する

・その時点で成績ができるだけ近い者同士が対戦するようにする



このルールに基づいて組み合わせを行うと、1ラウンドごとに全勝チームの数が半分ずつ、またはそれ以下になっていきます。

よって、今大会の参加チーム数に基づくと、NSB(26チーム)では5ラウンドで、WSL(68チーム)では7ラウンドで、WSO(15チーム)では4ラウンドで全勝チームが1チーム以下に絞られます。


一方、今大会ではNSB 全6ラウンド、WSL 全9ラウンド、WSO 全7ラウンドを計画しました。

全勝チームを1チームに絞るために必要なラウンド数よりも多くのラウンド数を実施すると、一般に順位の精度をより高めることができます。



さて、このような計画で大会を進めるにあたり、ひとつ大きな問題が存在しています。それは、上記のルールを満たす試合の組み合わせを求めることが非常に難しく時間のかかる作業であるということです。


そこで2017年の大会から組み合わせの自動化に取り組み、会場で皆さんにもご覧いただいた競技システムとして、有志のボランティアにより開発を行っており、毎年改善版が投入されています。

ただそれでも、上記のルールに基づいた組み合わせをプログラムで算出できないケースがあり、そのような場合は手作業により組み合わせの調整、確認を行う必要があります。


今大会ではWSLの第7ラウンドの組み合わせが、プログラムで算出できませんでした。

よって、当初WSL 第7ラウンドの後に予定されていたNSBとWSOの試合を繰り上げ、その間に第7ラウンドの組み合わせを手作業で実施しました。


それによりWSL 第7ラウンドは時間を遅らせながら実施することができましたが、残念ながら第8ラウンドの組み合わせについても、プログラムで算出できない状態が発生しました。


WSLの1ラウンドを実施するためには試合だけでも45分間、組み合わせの告知の時間なども含めると最低限55分間が必要となります。

よって、WSLの第8ラウンドを実施するためには、遅くとも13:05までに手作業での組み合わせ作業が完了する必要がありました。

しかし、12:50時点でその見込みが立たないことが明らかであったことから、WSLの第8ラウンド以降を中止する決定を行い、その分、交流会の時間を長く取ることにしました。


以上がWSL 2ラウンドキャンセルの経緯となります。

続けて、本件に関していただいているいくつかのご質問に回答いたします。


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Q1)

現場での選手に対する説明が不足していたのではないか?

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A1)

中止を決定した段階で各チームキャプテンを集めて中止になる事、およびその理由を説明しました。

質問を受け付けたところ数人から質問がありました。その数人の質問に答え、その後特にありませんでしたので、伝わったものと判断しました。

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Q2)

現場でのメンターに対する説明が不足していたのではないか?

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A2)

ご指摘の通り、WSLの2ラウンドキャンセルについて、メンターに対しては特別説明の機会を設けませんでした。

主な理由は以下の通りです。

・過去の大会においても、スケジュールの変更に関してメンター全体に向けた説明の機会を設けたことは無く、当時そのような場を設ける考えはありませんでした

・メンター向けの対応は競技運営の中でどうしても優先順位が下位になります

・ラウンドキャンセルに伴い生じた各種の対応、成績処理、表彰選定等の調整にリソースを集中する必要があり、メンター向けの対応に割ける戦力はありませんでした

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Q3)

試合時間の短縮やトーナメント戦への切り替えといった対応もできたのではないか?

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A3)

ルールに記載されている正規の試合時間は、前半10分、ハーフタイム5分、後半10分です。しかしこのタイムスケジュールでは実施できる試合数が少なくなってしまうため、前半4分、ハーフタイム2分、後半4分と試合時間を短縮して実施しています。

これ以上の短縮はゲーム性に与える影響が大きすぎると考えています。


勝ち残りトーナメント戦への切り替えについて、ご提案をいただきありがとうございます。

過去の大会では予選をスイス式トーナメントで実施し、その後決勝として上位チームによる勝ち残りトーナメントを実施したこともあります。ただ、その大会では勝ち残りトーナメントを実施することが初めから決定しており、予めその準備が整えられていました。


今回の大会は、全国の23ブロックから選出されているサッカー技術委員会約50名+競技担当理事で昨年12月以降、競技形式について様々な意見に基づき、議論を繰り返し、以下の通り決定されています。

・全試合スイス方式
・勝ち点のみで順位を決定する
・勝ち点が同順位の場合は、ポスター審査とソルコフ値を加えた点で順位付けする

決定事項は、3月4日に公開し、すべてのサッカー選手とメンター、関係者に告知済みです。この決定を覆すほどの理由があるとは、運営本部では考えておらず、トーナメント戦は最初から念頭にありませんでした。


それは、今大会はコロナでジャパンオープンを体験できなかった世代が多い中、より多くのチームに多くの試合をさせたいという第一目標があったからです。実際、データのある2014年からの過去の大会と比べると、1チーム当たりの平均試合数(全試合数を全チーム数で割った数値)は3番目に多く、また予選敗退などチーム別最少試合数は、全リーグ全チーム6試合か7試合出来た今大会が10年間で一番多い試合数になっています。


もう一つ、運営本部が望んだことは、コロナ以前のような、ここに来れてよかったと思えるようなジャパンオープンでしか味わえない体験をして帰ってほしいということです。


まだ飲食を含んだ交流会は難しいとのことでしたので、技術交流会という形で表彰式までの時間を選手やメンターにいい思い出を作って欲しくて、事前に、各世代の世界大会出場OBに声を掛けて、動くロボットを持ってきてほしいと数週間前に頼んでいました。名古屋市科学館に常設展示中の世界大会優勝ロボットを急遽持ってきていただいたりと、この交流会の準備に様々な人のご協力を得ています。他にも、何かしらの技術発表が行えるような準備(ロボカップのSSLやヒューマノイド)もお願いしていました。


交流会は、すべてOBにお願いをしていましたので、もしも試合数が少なくなって、交流会の時間が増えた場合は、有効に時間を使っていただこうと、WSL7ラウンドが遅れた11:30の段階で、交流会リーダーには、早めにスタート出来るよう事前に準備をお願いしていました。彼らが選手の声を拾い、リサーチし自分たちの出来ることを考えた結果があの交流会です。試合が2試合減ってしまったことは残念な結果でしたが、より交流会の時間が長く取れたことで、大会の満足度を落とすことなく終えられると判断しました。


あの交流会は、決してその場の思いつきで出来ることではありません。多くのOBOGや、以前の盛り上がりを知っている人達が、ぜひ今の選手たちにも味わってほしいと願って、協力して、準備をして始めて成り立つ出来事であったことを選手、メンターの皆さんにも知っていただければと思います。

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以上、WSLの2ラウンドキャンセルについて多くいただいておりますご質問への回答でした。



★不自然なスイス式の組み合わせについて

名古屋大会でのスイス式トーナメントは以下のルールに基づいて組み合わせを決定する予定にしておりました。


・同じ対戦は一度のみ実施する

・成績ができるだけ近い者同士が対戦するようにする

・(RCJJ2023では)成績は勝ち点>得失点>総得点>総失点で評価する(※)


※成績決定要素は、毎年評価し適宜変更が加えられています。


しかしながら本大会では、何件かご指摘もいただいておりますが、上記のルールに沿った組み合わせが行われませんでした。

「なぜルールに沿った組み合わせが行われなかったのか」、「具体的にどのようなルールで組み合わせが行われたのか」については、現在調査中となっております。


スイス式トーナメントとして適切な組み合わせが行われなかったことについて、謹んでお詫び申し上げます。


続けて、本件に関して頂いているご質問に回答いたします。


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Q4)

適切な組み合わせで実施されていない以上、公正な結果とは言えないのではないか?

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A4)

確かにスイス式トーナメントとして適当な組み合わせでは実施されませんでしたが、組み合わせはプログラムで行われましたので、一定のルールのもとで生成されています。全てのチームが同条件で競技が行われましたので、この結果を無効とすることは考えていません。

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情報が少なく恐縮ですが、以上が現在判明している経緯となっております。



★来年の大会に向けた対応について


・競技システムの安定化

今回発生した問題の原因を究明するとともに、来年度に向けた改善のためどのような対応が可能か、開発者と協議して進めてまいります。


・サッカー技術委員会のリソース強化

ジャパンオープンの準備は、現役のメンター、元メンター、OBOG、有志スタッフなどで構成されるサッカー技術委員会により、ボランティアで行われています。

サッカー技術委員会では大会準備等にご参加いただけるメンバーを常に募集しており、近年は特にリソースの強化に積極的に取り組んでいます。

その成果もあり、活躍いただいているメンバー数は順調に増加をしていますが、様々な情勢の変化などにより、大会準備に当たって必要となるリソースもまた増加傾向にあります。


ジャパンオープンの準備は大会のおよそ半年前から始まりますが、情報管理の都合などから、サッカー技術委員以外の方に初期からお手伝いいただくことは難しいです。


サッカー競技のさらなる発展にご関心をお持ちの方は、ぜひ技術委員会への参加をご検討ください。

サッカー技術委員会にご参加いただくには、各地域の技術委員会にお気持ちを伝えていただくのが最も近道です。

OB/OGの方などで進学や就職等により居住地が変わった方でも、参加していたブロック、繋がりのあるブロックの技術委員にお声がけいただければ全く問題ありません。


皆さまのご参加をお待ちしております。



また、競技以外の点についていただいておりますご質問にも併せて回答いたします。


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Q5)
「同伴者」と「一般客」の違いについて、事前に「同伴者は一般客よりも近くで生徒たちを見ることができる(パドックに入ることができる)」と聞いたが「同伴者」と「一般客」は同じ扱いでした。
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A5)
こちらから公式に発表している同伴者は、公式HPのチームエントリーの項目に記載の通り、「メンター、同伴者はチームと行動をともにでき、一般来場者よりも早く入場できます。ただし、パドックには入れません。」です。
主催者(開催地)が変わると毎回この条件も変わりますので、もしかしたら伝えた人が間違ってしまったのかもしれません。

今回は一般来場者は、3/25は11:00~18:00、3/26は9:00~14:00のみ入場可能でした。

同伴者は、選手と同様に3/24の準備日と、3/25 8:30~11:00、3/26 14:00~16:00の時間帯に入場可能で、開会式、表彰式等に参加することができ、公表通りであったと考えております。

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Q6)
ポスターのPDFを事前に提出し「受け取りました」のメールをもらったにも関わらず、現地につくと「ポスター未提出」になっていました。
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A6)
ポスター提出方法の変更はNews Letter1(3/5送信)から2日後の3/7には、News Letter2でお知らせし、サッカー技術委員会ブログでも3/7付で訂正を公開しています。

サッカー全109チーム中7チームが、提出先を間違えて、レスキュー競技のポスター提出先のentry@へ提出していました。そのうち、3チームは、大会当日選手が運営本部に問い合わせ、メンターに提出先を確認してもらい、提出時間の確認が出来た段階で、「提出期限遅れの減点対象とはならない。ポスター審査員がポスターを見れず、現段階ではポスター審査は行われていませんが、後日最終結果では反映します。」と回答しています。残念ながら、4チームは大会中サッカー本部に選手から連絡はなく、未提出で処理されていました。3/30になってレスキュー競技のポスター提出先まとめ係から、誤って提出したチームがありましたと連絡を受けました。その段階から、再度ポスター審査員に審査をお願いし、最終結果を変更するなど、その後の事務作業や世界大会推薦順位変更などが発生しました。

大会終了後にメンターから指摘がありましたが、メンターの皆さま向けに改善策として提案させていただくならば、選手が疑問に思ったり感じたことは、ぜひ当日、選手が直接運営本部に確認をしに行くことが大切だと選手にアドバイスしてほしいと思います。運営本部は、何に疑問を抱いているのか、何がわからないのかは質問を受けて初めてわかることがほとんどです。
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